検査性能についての正しい知識を身につけましょう!
私たちが受診している健康診断で何かしらの異常が見つかり、再検査を行ったけれど異常がなかった…という話を耳にしたり、ご自身で経験がある方も多いのではないでしょうか。
健康診断ではよくあることで、検査の性能が悪いと決めつけてはいけません。
医療の進歩により、画像検査、生理検査、検体検査などで様々な情報が把握できるようになってきましたが、どんな検査も100%ということはありません。
検査について正しい知識を身につけ、ご自身や愛犬、家族の健康維持に役立てていただきたく、検査に関係の深い「感度・特異度」、「偽陽性・偽陰性」「有病率・陽性的中率」について簡単にご説明していきます。
1)感度と特異度
感度と特異度は検査性能の指標として用いられる用語です。
感度とは「病気がある」場合に「病気がある」と正しく判定できる確率のことです。
検査の「感度が高い」と、病気を発見できる確率が高くなります。
特異度とは「病気がない」場合に「病気がない」と正しく判定できる確率のことです。
検査の「特異度が高い」と、病気に罹っていないことを高確率で確認できます。
感度と特異度はその検査固有の性能であり、後述する有病率に左右されません。
2)偽陽性と偽陰性
冒頭でも述べましたが、検査に100%はありません。必ず偽陽性と偽陰性のリスクがあることを理解しておく必要があります。
偽陽性とは「病気がない」場合にもかかわらず「病気がある」と判定してしまう確率です。
偽陰性とは「病気がある」場合にもかかわらず「病気がない」と判定してしまう確率です。
感度80%の検査の場合、残りの20%は偽陰性(病気があるのに病気がないと判定)となり、特異度が90%の場合、残りの10%は偽陽性(病気がないのに病気があると判定)となります。(図1)
(図1:感度と特異度、偽陽性と偽陰性のイメージ)
感度と特異度の両方が高い検査は大変優れていますが、いずれも100%の検査はなく、一般的に感度を上げれば特異度が下がり、特異度を上げれば感度が下がる傾向があります。
3)有病率と陽性的中率
検査の性能(感度、特異度)に対して、実際検査を受けたときの偽陽性率(検査では異常とでたものの実際に病気はなかったケース)に疑問を持たれている方も少なくないと思いますが、その答えが「有病率」と「陽性的中率」の考え方になります。
有病率とは、検査の対象となる人(動物)のうち、病気を有している割合のことをいいます。たとえば、ある病気に罹っている人が1,000人に1人であれば、有病率は0.1%になります。
陽性的中率とは、検査で陽性(病気の疑いあり)と判定された症例のうち、本当に病気を有している確率のことを指し、正しく陽性を的中させる確率と言えます。
病気の時に病院に行って受ける検査と特に病気の自覚症状がない状態で受診する健康診断の検査ではこの陽性的中率が大きく変わってきます!
この有病率と陽性的中率の理解が、健康診断の検査結果を理解するうえでとても大切になりますので、実際に例を出して計算してみましょう。
4)実際に陽性的中率を計算してみよう!
例えば、感度が90%、特異度90%の優れた検査を、健康診断で1,000人が受診した場合を考えてみます。
①有病率が1%の場合(1,000人中10人が病気を有している)
一般的に感度・特異度90%の検査は優れていると思いますが、健康診断のように病気を持たない人がたくさん検査を受けると確率的に偽陽性が多くなり、結果として陽性的中率が低くなってしまいます。
②有病率が10%の場合(1,000人中100人が病気を有している)
病気の人が病院で検査を受ける場合、病院に来る人達の有病率はかなり高まるため、陽性的中率が高まりますが、健康診断の場合は逆に病気でない人たちが多数受診するため陽性的中率が下がることがご理解いただけたでしょうか。
では、健康診断の検査で出来る限り「陽性的中率」を高めるためにはどうすればよいでしょうか?
例えば以下の2つのアプローチが考えられます。
- ①検査の感度と特異度をより高くする
- ②検査対象の病気数を多くする(検査対象の有病率を高くする)
①も②も企業に頑張ってもらうしかありませんが、②のアプローチのように、複数の病気(合計の有病率を30%とした場合)を対象とした検査システムにすれば、検査性能は先ほどと同じ(感度90%、特異度90%)であっても、陽性的中率を79.4%まで高めることもできます。
最後に
今回は“検査性能”についてご紹介しましたが、どのような検査であれ絶対ということはありません。検査の性能を正しく理解しておくことが病気の早期発見・早期治療につながり、愛犬のみならず飼い主の皆様やご家族の健康な生活の維持にお役立ていただければ幸いです。
【監修】日本獣医生命科学大学付属動物医療センター
臨床検査技師 早川典之
※myRNA DOGsは多くのがんを対象とすることで有病率を高め、健康診断でスクリーニング検査によりがんを早期に発見する確率(陽性的中率)を高めています。